伊坂幸太郎作品はいつも読み始めて後悔します。
独特の不穏な空気と陰鬱な雰囲気にひたと包まれるような気がするからです。
しかし続きが気になってぺージをめくる手は止まらない。
このフーガはユーガも例にもれずそのような作品で、一気に読了しました。
双子の優我と風我は一年間でたった一日、誕生日の日に二時間ごとにお互いの体が入れ替わるという特殊能力を持つ双子です。
双子の体が入れ替わるという設定はたまに見られるものですが、本当にその能力を軸に物語が展開されるのか不安になるほど厳しい制限。
終わってみればその不安は全くの杞憂でしたが。
無駄のない文体が寄りをテンポを高め、後半の怒涛の展開には脳が熱くなるような感覚を受けました。
語弊を恐れず言うならば、いわばこの物語は双子の復讐劇。
復讐の対象は清々しいほどの悪人なので、作中の雰囲気と裏腹に読後わずかなスッキリ感があるのかもしれません。
思慮深く慎重な優我と大胆で勇気ある風我のコンビでしか成し遂げることのできない復讐劇だったと思います。
そんな特殊な能力がありながらも、お互いのことはお互いが一番わかっているという信頼感が何度も強調されていたのが大変素敵でした。
マンガでもそういうコンビが大好物な私…。
切ないながらも信頼による温かさとか、わずかな救いとか、伊坂幸太郎ワールド全開の作品でした。
重厚な作品をお求めの方にお勧めしたいです!!