「生き方」や「食べ方」のはなし 『ひなた弁当』山本甲士

みなさんこんにちは。
2023年もすでに3週間がたってしまいましたね。年々早くなっていく体感時間…。

現代社会で生き急ぐ皆さんに本日ご紹介するのは『ひなた弁当』です!
こちら知り合いに勧めていただいた一冊なのですが、とても心温まる作品でした。

主人公の芦溝良郎は50歳を目前にしてリストラにあってしまいます。
うだつのあがらない良郎は家族に追い詰められながらも懸命に再就職先を探すのですが、なかなかうまくいきません。
身心ともに限界を迎えそうなある日、良郎は公園で見かけたドングリを見て、もしかして食べられるのではないか、、、と思いつきます。
その後、良郎は野草の知識を身につけたり、釣りの技術を身につけたりする中で、自分で獲物をとって調理し、食べることへの面白さやきらめきを感じるように。
そんな良郎が身につけたノウハウを活用して、自分で食材を調達し、人々の心に届くような「ひなた弁当」を販売するというサクセスストーリーです。

前半はリストラに至る過程など陰鬱な展開も多くありましたが、良郎が自給自足の面白さに目覚めた後の展開はテンポよく、引き込まれるように読むことができました。
悪い人が出てこない、登場人物が前向きになれば運良く色んなことがトントン拍子で進む。
人によっては「ご都合主義」とも思えるそんな展開が私は大好きです。
苦しいときに救われる本、心を穏やかにしてくれる本、というのは自分の中にいくつも持っておくべきだと考えています。
また前述のドングリの思い付きの描写で良郎は即座に、人間は米よりも長くドングリを食べていた、と人類の歴史を想起するなど雑学に長けた様子が見られます。
そんな良郎の性格だからこそこの物語があったのかなと思います。

料理する描写がとても細かく、読んでいるだけでおなかがすいてきそうな表現でした。
現代っ子代表の私には食べたことのないような野草や川魚ばかり。
とても興味がそそられました。とって食べてみよっかな…。

また釣りを始めたばかりの良郎は釣りの用語が全く分かっていなかったのに、物語後半、釣りの話をするときには様々な用語を使いこなしていて、作中での良郎の変化が分かりやすく、良郎と一緒に知識を得ている気持ちになることができました。

みんながわすれかけている人と自然のつながり、やりたいことをやれる余裕のある心。
色々なことを思い出させてくれるような作品でした。
自身の将来に思いを馳せる、すべてのみなさまにお勧めしたい作品です。

 

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