「編む」の意味  『舟を編む』三浦しをん

私は小さいときから本を読むことが好きで、文章を書くのも好きな人間でした。
想像力や構成力のなさゆえに、物語をしっかり書いたという経験はありませんけど…。
ですが、みんなが嫌がっていた読書感想文も苦にしないタイプの子供だったわけです。聞いた人はみんな変だと言いますが。。。

そして縁あって今もこのようにライターのまねごとをさせていただいているわけですが、文章を書いているとき、どんな表現を使うか、どんな言葉を使うかというのは、誰しもが経験したことのある頭のひねり方だと思います。
僕はそんな作業のことを「文章を紡ぐ」と表現するのがとても好きです。作文をしているときの頭の中を適切に表していると思いませんか?

そんな風に文章を書くとき、よりよい表現や語彙を求めて、我々は辞書を開きます。

本日紹介する『舟を編む』は、そんな作文の支柱となる辞書を作ることに人生をささげた人たちの物語です。主人公の馬締さんはやや内向的で、特徴的な人、というだけでなく、辞書作りに真摯に向き合っている人物です。主人公然としない登場人物ですが、読者を含め応援したくなるような人柄です。

僕たちは辞書を頼りに文章を書くことができますが、辞書を作るときは頼るものがありません。なんとなく心細く大変な作業だとは想像できますよね。
馬締さんたちはそんな作業を、ことばという広く深い海を冒険する舟を編んでいる、と表現していました。
編むも、紡ぐと同じく糸を連想させることばで親和性も高く、スッと頭にイメージがわくような表現ですね。

長きにわたって辞書作りに没頭する人たちを描いた今作は、単純にお仕事小説と分類することはできません。
馬締さんの妻の香具矢さんや、同僚の西岡さんをはじめ、三浦しをん先生の書く人物は全員魅力的です。
仲間との絆や、恋愛模様なども垣間見えるのが三浦しをんイズムを感じました。

小説や絵本などはとは違って、辞書は「人間が作っている」感がどこか希薄にかんじませんか?
僕はこの作品を通じて、それは辞書編纂という大規模なプロジェクトには本当に大勢の人たちがかかわっていて、「作者」「著者」のように焦点が当たる人物がいないからなのかなと思うようになりました。

終始あたたかい時間がながれ、さすが本屋大賞と納得する今作品。
きっとあなたも読後は、今までの無機質な印象ではなく、熱量を持った「舟」として辞書を見ることができるはずです!
読んでよかった、が保証される本。ぜひお手に取ってみてくださいね。

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