日本人の美意識の原点

祇園精舎の鐘の声
諸行無常の響きあり
沙羅双樹の花の色
盛者必衰の理を表す

この冒頭で始まる有名古典文学、そうです!
平家物語です。授業で習って暗唱したという方も多いのでは?
しかし授業で現代語訳したり、内容を理解したりするとどうも作業的になって面白さを感じられなかった…
実はそれ、すごくもったいないです!!
長く語り継がれているのには相応の理由があるのです!!

平家物語はご存知の通り、平安時代に栄華を極めた平家の崩落を中心に描く物語です。
「平家にあらずんば人にあらず」という一説はあまりにも有名ですね。
そんな傲慢な平氏を源氏が討伐していく勧善懲悪もの、という解釈は少し違います。
ここからは私の個人的な感想を含んでしまいますので参考程度にご覧ください。

作品を通して、散っていくものに美学を感じることができるのが印象的でした。
例えば平敦盛の最期。この場面は教科書にも採用されていることが多いですが、みなさん覚えていますか?
16歳で一ノ谷の戦で初陣を飾る敦盛が、熊谷次郎直実との一騎打ちで命を落とす場面です。

最期を覚悟した敦盛が、16歳ながらに毅然とふるまう態度と、敦盛の美貌と年齢から息子に照らし合わせ、とどめをためらってしまう直実の葛藤が印象的です。
一騎打ちにあっさり敗れた敦盛ですが、なぜか格好よく映ってしまう。そんな不思議な場面です。

私はこの描写から日本人の奥底に根付いた、去り際の美学や判官びいきの価値観を感じました。
使ったものはきれいにして返す。ついつい負けている方を応援してしまう。
そんな日本人の原点が垣間見える作品だからこそ、多くの人の耳に届くような超大作となったのではないでしょうか。

平家物語は超大作ゆえに、一気に読むのは難しいかもしれません。
しかし現在、フジテレビの深夜枠にてアニメ平家物語が放送中です。
まずはこちらを視聴して、その後本で読むのがオススメです!
平家物語は章ごとに読んでも内容の理解に支障がないので、短編のように分けて読むこともできます。

当店にも、初めての古典文学でもわかりやすい訳の平家物語がございます!!
ぜひ手に取って、儚さという美しさを感じてみてください!

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